続き

蝉丸はあとを見送り泣き崩れます。双シヲリといいますが、両手で泣く態をします。そこへ間狂言(あいきょうげん)の博雅の三位(はくがのさんみ)が登場し蝉丸を抱き上げ、作り物の藁やに入れます。この人は今昔物語のよると延喜の御子浜部卿の親王の御子で、蝉丸のもとへ三年通い流泉啄木の秘曲をされた人といわれましたが、能の中では出てきません。

そのあといよいよシテ逆髪の登場です。狂女の態で一声という囃子で出てきます。蝉丸のお姉さんであるこの方は、髪がさかさまに生えていたのでさかがみと呼ばれていました。この名は逢坂山の道祖神、坂神からきているともいわれています。通常と異なり左にかずらを少し垂らして異様な姿を表わします。この中で舞われる、花の都を立ち出でてといわれる箇所は謡、舞とも有名なところです。

ところでこの曲は戦時中は演じられませんでした。能の曲にはこういう曲以外にも詞章を替えさせられたりしたものが数多くあります。また機会があれば触れたいと思います。

蝉丸は藁やの中で扇を開き、琵琶を弾く態をします。逆髪はその音に聞き入り近くに寄ります。蝉丸は博雅の三位かと思い声をかけます。その声をきいた逆髪は弟の蝉丸だと気づき逆髪だと名乗ります。蝉丸は藁やから出て、二人は抱き合って再会します。ここはかなりドラマチックなところです。二人は再会を喜びつつ、今の境遇を嘆きます。

琵琶の音によって再会した二人でしたが、またすぐ別れがきます。逆髪は橋掛かりへ行き、舞台の蝉丸を見返り名残りを惜しみます。逆髪はシヲリながら先に幕に入り、蝉丸がシヲリをして曲が終わります。

能の中でもかなり悲劇的な曲です。20日の武田同門会で勤めます。逆髪は以前勤めましたが、蝉丸は初めてです。この役は前にも触れましたが、父が途中眼底出血で本当に見えなくなってしまいましたこともあり、感慨深いです。ただあまりめそめそした演じ方はしたくないとおもっています。シテは同門で女流の郷三枝子氏です。当日券もございますので、ご高覧賜れば幸いに存じます。

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