つづき
この度私が勤めます安宅ですが、今回で2回目になります。
初演は平成19年3月18日武田太加志先生23回忌追善の花影会でした。
今回は父の23回忌でしたので、あえて同じ曲を選びました。
また勧進帳、瀧流の演出、同山頭の武田尚浩氏もお願い申し上げ前回と同様にさせていただきました。
前回未熟ながらも精一杯勤めさせていただきましたが、大曲安宅の壁にものの見事に跳ね返されました。
現在の私のテーマでありますが、いかに自分の能を舞えるか。これが安宅にはとても必要なことを思い知らされました。
あの時からそのことを考えて稽古して参りました。
8年後どこまで自分ができるかを測るには、同じシチュエーションがいいと考えました。これで終わりではありません。まだまだ求めることは限りなくございますが、どこまで松木千俊の安宅ができるか挑戦するつもりでした。
ところで最近拝見する能の安宅の多くは、映画の虎の尾を踏む男達(黒沢監督)の弁慶像に似ているような気がします。
弁慶と義経の熱い主従関係を大事に扱った映画です。(名作です)
関所を通るために弁慶は強力に扮した義経を金剛杖でたたきます。弁慶は自分の行動を義経に泣いて詫びます。一行は今の心情を嘆きます。
やがて富樫の行う酒宴の最中、一行は陸奥へ旅立ちます。
ただ私は能の安宅の一番の見どころは勧進帳で、その後の話はさらっと演じた方がいいのではないかと思うのです。この気持ちはいずれ変わるかもしれませんが、
今度の安宅はそこを中心に考えたいと思います。
悲劇というより祝言の気持ちで勤めたいと思っております。
以前隅田川を勤めた時、隅田川という曲はお客様を舞台で泣かすのではなく、帰り道でぐっとこさせるのだと、大先輩から言われたことがあります。
私が求めている能はその様な演じ方です。いろいろな解釈があることは理解しております。もう少し年を取りましたら、考え方が変わるかもしれません。その時はまた沢山稽古して勤めたいです。道は長いです。
檀の会の曲について、見どころなどはまた後日書かせていただきたいと思います。